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トルコ紀行

 まだ朝霧のかかる薄暗い早朝、私はゆらゆらと天空を舞っていました。そこで浴びた、あの朝日の美しさと、見下ろすアナトリア高原の雄大さは、いまもこの目に焼き付いています。
 2012年夏、ペルシャ語で「美しい馬の地」を意味する場所、カッパドキアを旅したのです。キノコ状のユニークな岩が連なる、あの世界遺産の街です。ここは、熱気球による”バルーン・ツアー”でも良く知られています。
 乗車する気球に取り付けられたゴンドラは4つに仕切られ、2名ずつ乗り込んでいきます。しかし、私は参加人数の関係から、3名で一つのスペースに入れられてしまいました。ちょっと不安を抱えながらも、ゆっくりと上昇する色鮮やかな気球、その揺らぎに身を任せ、そこから眺める朝日に照らされた奇岩群を堪能していました。それはもう別世界に迷い込んだような、神秘の光景を天空から目撃した気分です。

「カッパドキア、最高~ !」
 そんな夢のような空間に包まれていましたが、しばらくすると事件が起きました。なんと、湖上を飛行していた私たちの気球の高度が一気に下がりはじめたのです。そして、水面ギリギリのところまで降下した次の瞬間、
“ドボ~ン!”
水中にゴンドラが落下したのです。
「えっ!ウソでしょ!!!」
ゴンドラは、私たち3人側へと大きく傾き、そのまま湖に沈みはじめたのです。
「もう死ぬ…」
そう思っているうちにも、水はどんどんと中へ入り込み、膝上まで浸かってきました。
すると、今度は一転して一気に上昇し始めた気球。みんなは声を上げて笑い出しました。しかし、私は笑うことなど出来ずに「こんなアトラクション楽しめるかぁ~」と、直面した“死”にちょっとイライラしてしまいました。

 あの水没が狙いだったのか、ミスをしたのか、いまとなってはわかりませんが、お気に入りの靴もパンツもビショビショにされ、皮肉のひとつも英語で言ってみたかったのですが、その後も全く進歩していなかった私の英語力、いつか再びこの地を訪れてリベンジしたいです(笑)。
 そんなトルコの旅でしたが、「妖精の煙突」とも呼ばれる奇岩群の眺めは最高で、まるで天空を散歩しているかのようでした。

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