blog
June 16, 2016
楽都へ
“anfang”をオープンする以前は、年に一度は海外旅行に行っていました。しかし、スーツケースは一つも所有しておらず、いつもレンタルです。それは、その時々に合わせてサイズを選べますし、手元にあって日常見慣れているケースよりも、初めての物を手にして旅立つ方が、「非日常」へ向かうワクワクさが益してくる気がしていたからです。
とは言っても、特に色や形などのこだわりがあった訳ではありません。しかし、このヨーロッパの旅では、奮発して「RIMOWA /リモア」を借りることにしました。以前から、もし買うならちょっと高いけどこのブランドがいいなぁと考えていたからです。
「音楽の都」、そして「楽都」とも呼ばれる街 ”ウィーン”。憧れのリモアを手に、憧れの都市へと旅立ったのは、2013年の秋のことです。
機内から朝日や夕日の写真を撮ることは、旅の楽しみのひとつで、いつも窓側の席を予約します。よく皆さんが心配されるトイレについては、私の場合には通路側の方が立たれた際に行けば十分です。しかし、今回ばかりは隣の方がずっと座られたままなのです。そうなると、何故かいつも以上に行きたくなるものです。この旅を機に、今後は通路側のシートを予約しようかとも悩んでいます><
ウィーン国際空港には、予定時刻通りに到着しましたが、早くも事件は起きました。何と、ベルトコンベアの上を流れてきた私のリモアは、持ち手の辺りから縦に20cm以上も裂けていたのです。「なんてこと〜、ドイツ製なのに…」と思わず口走ってしまいましたが、「まぁ、いいか。レンタルだし…」とすぐに落ち着きを取り戻しました。航空会社のカウンターへ向かい、片言の英語とジェスチャーを交えて説明しましたが、”英語が通じた!” とうよりは、割れているのは一瞬見ただけでわかりますよね。「いつ買いましたか?」との質問に対し、「レンタル、レンタル」と連呼した私…。もちろん、全く通じませんでした。
市内のホテルにチェックインした頃には5:30pmを過ぎていて、すでに外は薄暗くなりはじめていました。常連のお客さまから、「ウィーンは、”シュニッツェル” が有名だから行ってみてね」、と教えて頂いていたので、早速、有名店の ”フィグルミュラー”へ。お勧めをオーダーして、街を眺めながら非日常を満喫していました。するとそこへ、お待ちかねの”シュニッツェル”が運ばれてきました。これには驚きです! 大き過ぎです! 「旅の初めから、こんな巨大な揚げ物を食べて大丈夫なのかなぁ」とも思いましたが、一気にかぶりついたのでした(笑)。あの、カリッカリの食感はくせになります。あっと言う間に半分以上を食してしまいました。レモンビールとの相性もぴったり! シュニッツェルは日本でいうと、”巨大カツレツ”という感じでしょうか。
食後、もう辺りは真っ暗になっていたのですが、明かりが見える大通りを目指して歩き出しました。そこは多くの人で溢れ、ビルの窓から身を乗り出して通りを眺める人々もいます。毎年、春に行われる「ウィーン・シティマラソン」には、世界130ヶ国、42,000人ものランナーが、市内の名所を巡るそうですが、まだ肌寒いこの日にも、ライトアップされた通りで夜のマラソンが行われていたようです。
そんな中をブラブラしていると、あっという間に11:00pm。ホテルに辿り着いた時には、すでに入口は閉ざされていました。そんな時にために教えてもらっていた暗証番号を入力。「ギー、ガチャ」、「あれ?」ロック解除らしき音はするのですが、ノブを回しながら扉を押しても引いても一向に開きません。10回以上トライした後、ホテルに電話をすることにしました。しかし、こちらもコール音が響くだけで応答はありません。プチホテルを選んだばっかりに…。冬は比較的寒く、平均気温は氷点下近くまで下がるウィーン、10月初旬とはいえすでにかなり冷え込んでいました。
「ここで野宿ですか…?」
と肩を落としていると、救世主が登場! ホテル内を歩く、宿泊客らしき人影を発見したのです。そしてまた片言の英語とジェスチャーを交えて、無事に中に入れもらうことが出来ました。
翌日も天候に恵まれ、電車に乗ってメルクという街を訪れました。車中から眺めたあの田園風景の美しさは、いまも記憶に残っています。街を散策しながら、”メルク修道院”へ。バロック建築であるこの修道院は、1700年代前半の建築物で、ドナウ川を見下ろす岩肌に建ち、ヴァッハウ渓谷にも隣接しています。教会、大理石の広間、そして中世の手描き原稿が無数に納められている ”図書室の天井画”は、とても見応えがあり、圧巻です! ガイドブックにもよく取りあげられている”教会のフレスコ画天井”には、「おぅ〜」、と声を漏らしている人もいたくらいです。ちなみに、「フレスコ」とは、絵画技法のひとつで、イタリア語の “fresco” 「新しい」というのが語源だそうです。
オーストリアでは第二の国歌とも呼ばれる、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ、「美しく青きドナウ」。このドナウ運河のクルーズがあることを知り、フェリーターミナルへ。”美しき青きエメラルドブルー“、いったいどんな色なんだろうと想像を膨らませていたドナウ川は、ちょっと微妙でした…。しかし、魅力は川沿いにあったのです! 山に囲まれたドナウ川、周囲に広がるぶどう畑(ワイン用)、山の麓に見え隠れする古きお城の姿に魅了されます。そんな過去のような、いつかの記憶の世界を彷徨っているような空間と、ゆったりとした川の流れに癒されました。
夜には、この6月下旬から日本の帝国劇場で公演される『エリザベート』を鑑賞しに行きました。これは、オーストリア=ハンガリー帝国の皇后の生涯を描いた、ウィーン発のミュージカルです。日本では、彼女(皇后)の名前を「エリーザベト」と表記することが多いようですが、現地では、「エリザベート」と発音されていたような、いないような…。上演中、ちょっとウトウトしていたものですから(苦笑)。
翌日、念願のスーツケース、「リモア」をウィーンの街で手に入れました!